清酒発祥の地・奈良。現代に通じる酒造の基礎が築かれていた
日本における酒造りの歴史をひも解けば、神話に語られる、ヤマタノオロチを退治するためにスサノオノミコトが用意した「八塩折之酒(やしおりのさけ)」は古事記や日本書紀の中にも記述があり、木の実や果実を原料にしていたのではないかという説があります。米を原料としたお酒となれば「口噛み酒」が知られています。唾液に含まれる酵素で澱粉を糖化して造るこのお酒は、神への捧げ物として神聖視されていました。
米による酒造りは稲作が広がった弥生時代の頃から長い時間をかけて技術が培われ、いわゆる「濁り酒」を経て、やがて今につながる「清酒」へと。その発祥は奈良県の正暦寺(奈良市)という古刹にあると言われています。この寺院による清酒造りは、殺菌の工程や複数回の仕込み、品質の均一化などにおいて現代の酒造に通じる原型となった。そう考察する研究者も少なくありません。
奈良時代には「酒造司」という醸造関連の公的機関が平城宮に設置され、日本最古の神社である大神神社(桜井市)では酒造りの神様をおまつりするなど、古都・奈良の人々にとって日本酒は実に関わりの深い存在です。かような歴史ある土地で酔鯨ブランドの価値を確かめるべく、一軒のフレンチレストランを訪れました。
未知の食材との出会いを純粋に楽しむ
そのレストランは、爽やかな緑と水面の深い藍色が目にも鮮やかな奈良の名所・菖蒲池の池畔にあるLa Terrasse“irisée”(ラ・テラス〝イリゼ〞)夕焼け時ともなれば、空の茜色が池をじんわりと染めゆくロケーション抜群の立地で、店内は自然と調和した開放感ある空間設計です。お客様をおもてなしするシェフの鷦鷯(ささき)進さんはフランス、スイスと、20年に渡ってヨーロッパの名店で修行を積んだキャリアの持ち主。やわらかな物腰と謙虚な話しぶりが印象的ながら、料理に対する情熱はどこまでも職人然としている、気持ちのいい好人物です。
扱う食材は地産地消を軸に据え、県内の五條市や明日香村といった地域で農業を営む方々から直接仕入れることも少なくないとか。休日には畑を訪れ生産者目線の作物の出来を聞き取りするなど、情報収集にも時間を惜しみません。また、料理においては「意外性や面白さを求める気持ちを失ってはいけないと日々、心掛けています」と鷦鷯さんは話します。食材選びにおいてはやみくもに地元産にこだわるのではなく、スタッフの出身地をもとに北陸や九州などの季節の名産にもアンテナを広げ、また、自身が生まれ育った山陰地方からの仕入れルートも確保するなど、意欲的に料理の幅を広げ続けています。
「食材の調達はもちろん仕事の一環ではありますが、同時に趣味のようなものかもしれません」と鷦鷯さんは笑います。初めて知る農作物にはいつも驚きがあり、どのような食材と組み合わせてどのような盛り付けにしようかと想像する過程は、料理の世界に身を置いているからこそ得られる大きな楽しみの一つ。土地と人に十二分の敬意を払い、その上で、ぶれることなく自身の納得を追い求めています。
フレンチのふくよかさと日本酒の爽やかさが見事に融合
2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、日本酒は海外でも広く認知されるようになりました。ヨーロッパでは日本酒のラインナップを揃えるレストランが増加傾向にあるなど、西洋料理とのペアリングはすでに一定の市民権を獲得しています。「フレンチの世界では果実香の強いタイプの銘柄が特に好まれます」 そう話す鷦鷯さんは、果たして酔鯨の日本酒にどのような可能性を感じるのか。答えを求めて、SUIGEIHIGH END COLLECTION 純米大吟醸《万》を試飲していただきました。
グラスを傾け一言。「清涼感のあるすっきりとした味わいですね」と鷦鷯さんは第一印象を言葉にし、続けて「食中酒として合わせれば、肉料理であれ魚料理であれ高いレベルで調和をもたらしてくれるのではないでしょうか」と、可能性を見出していました。酔鯨のフラッグシップとも言える《万》に対する鷦鷯さんなりの解釈は、大山どりを主役にした一皿に集約されます。仕上げられた料理は、大山どりのガランティーヌ。ガランティーヌとは、鶏肉や牛肉などをたたいて生地のように広げ、その上にひき肉、細かく刻んだ野菜を乗せて円筒形に巻き、煮る、蒸すなどの加熱を経て輪切りにするフランス料理です。
鷦鷯さんが中身の具材として取り入れた食材は鶏のムース、黒トリュフのピューレ、そしてフォアグラと、実にフレンチらしいなめらかな舌触りの組み合わせ。添えられたブロッコリーとマリネしたカリフラワーが食感のギャップを生み出します。スライスしたトリュフもふんだんにあしらわれていて、スパイシーにも感じる芳醇な香りが鼻腔を心地よくくすぐります。濃厚な旨味とやわらかな肉質が際立つ大山どりとこれらの食材が織りなすハーモニーは感動的ですらあり、ひとたび口に運べばたちまち至福の世界が広がります。
足し算によってふくよかな味を表現するという側面があるフレンチに対して、《万》の軽やかさは食中酒として最適な相性と言えるかもしれません。味覚が適度にリセットされ、何度でも至福を味わうことができる。そんな贅沢なペアリングが実現されていました。
感謝の気持ちを胸に、大胆な挑戦を続けていきたい
幼少の頃に手間暇を惜しまず料理を作ってくれた母の姿を見て、この世界で生きていくことを志すようになった鷦鷯さん。ヨーロッパでの修業時代は前菜からメインに至る各セクションで技術を身につけると同時に、「経営の基礎も叩き込まれました」と振り返ります。帰国後は神戸の有名店に料理長として就任し、そして今、奈良の地で存分に腕を振るう鷦鷯さんに、一つの問いを投げかけました。
「料理人として大切にしていることは?」
答えはいたってシンプルでした。
「どんなときでも厨房を清潔に保つ。私にとって最も大切なことです」
初心を忘れず、基本をおろそかにしない。伝統に敬意を払いながら創意工夫の意欲を持ち続ける。鷦鷯さんのメンタリティは、料理人を志した頃から何一つ変わっていません。自身を育ててくれた人と環境への感謝の気持ちを失うことなく、土地の文化と伝統に敬意を払いながら大胆な挑戦を続けていくことで、さらなる高みを目指しています。
《万》に対する印象として、食中酒を追求する酔鯨の日本酒造りに「新しい挑戦への気概が感じられました」と、共感するところも少なくなかったとか。心地良い刺激を糧に、鷦鷯さんは確かな足取りで創造への道を歩み続けます。
シェフ 鷦鷯 進(ささきすすむ)さん
1991 年、大阪のエプヴァンタイユで料理人人生をスタートさせる。1997 年より渡仏し、約20年間ヨーロッパ各地にて研鑽を積む。スイスの Restaurant Cheval Blanc では副料理長に抜擢され、ミシュランガイドに三つ星レストランとして掲載されることに貢献。2021 年より現職。就任1年目にしてラ・テラス“イリゼ”がミシュランガイドに一つ星レストランとして掲載され、3年連続ミシュラン一つ星として掲載される。
La Terrasse “irisée”
仏蘭西料理
ラ・テラス〝イリゼ〟
〒631-0032 奈良市あやめ池北1丁目34-7 HANA 1F
電話:0742-40-0066
営業時間:
【Lunch】11:30~13:00(L.O.)15:00 closed
【Dinner】 17:30 ~18:30(L.O.)
定休日:火曜日、水曜日および不定休
酔鯨 純米大吟醸 万-Mann-
「食中酒」の魅力を最大限に表現した味わい
酒造好適米最高品質の兵庫県特A地区の山田錦。その米だけを使用して酔鯨の醸造技術で醸した『純米大吟醸 万〜mann〜』。その香りや味わいは、最高級な酔鯨の純米大吟醸にふさわしい芳醇で爽やかなキレとハーモニーを生み出し、大人のテーブルをより華やかに満たしていきます。黄金色に広がる収穫時期の米の大地からインスピレーションを受けた金色のwhale tail マーク。その黄金色のパッケージデザインには、酔鯨の最高級酒を表すフラッグシップの日本酒への想いが宿っています。食中酒として完璧なバランスを酔鯨の技術で追求した、これこそが酔鯨という純米大吟醸であり、それは最高級の山田錦を最大限に表現した『ここに極まる、金色(こんじき)の大地』。
酔鯨の酒づくりに対するグリット感を込めた上質な香味をお楽しみください。
PAIRING
酔鯨 HIGHEND COLLECTION 純米大吟醸 万-Mann-
使用米 / 山田錦(兵庫県産)
精米歩合 / 30%
内容量/720ml
価格/11,000円(税込)