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Vo.10 【 LURRA° 】食の喜びを支える、根源的な「香り」への想い


加熱調理により、人類は今に至る飛躍的な進化を手に入れた


 殺菌により衛生が保たれ、生命を脅かす一つの要因が排除された。生食と比較して栄養成分の消化と吸収が容易になり、身体的な成長が促された。ただよう煙から発せられる香りとたんぱく質が分解されて生じるアミノ酸による旨

味に刺激を受けることで、他の生物をはるかにしのぐ高性能な脳が形成された。と、考えられる……。


 肉食でもなく草食でもなく、雑食性である人類は、火を使う加熱調理を覚えたことで飛躍的な進化を遂げたとする学説が存在します。人類の誕生からおよそ500万年。悠久の時を経て、料理は単なる生存のための手段からときに人と人の和を醸すツールとして、ときにアーティスティックな表現分野として多種多様な発展を遂げ現在に至ります。

 その間、香りと味に対するプリミティブな衝動と喜びは果たして失われてしまったのでしょうか。それとも、今な

お私たちのDNAに深く刻まれているのでしょうか。そんな根源的な問いかけが頭をよぎる名店を訪れました。


 場所は京都・東山。大通りから外れた静かなエリアに佇むその建物は築130年の京町家。2019年のオープン後、

コロナ禍による一時休業を余儀なくされ、2022年7月より営業を再開した「LURRA°」は、薪窯料理を軸に据えたジャンルレスな気鋭のレストランです。


 シェフ、ソムリエ、ミクソロジストの立ち位置から国境を越えてそれぞれに研鑽を積み重ねた3人の若者が共同オーナーを務める同店は、スタート時間を固定して、訪れるお客様に舞台の幕開けのようにコース料理を提供するというスタイル。ニュージーランドのレストランで出会ったという3人は個々に抱く料理観や哲学、これからの生きる道を語り合う中で意気投合し、自分たちの理想を求めて、紡がれた伝統と豊かな自然が息づくこの京都の地を選んだとか。唯一無二の独創的な逸品の数々は、全国の美食家の垂涎の的となっています。



薪窯が料理における独自性を無限に広げる


 ゼネラルマネージャーを務めるソムリエの宮下拓己さんに話を伺うと「LURRA とはスペインとフランスにまたがるバスク地方の言葉で『地球』を表しています。後ろにつけた丸は地球をまわる月。世界中を探してたどり着く、この場所の〝座標〞といった意味合いで名付けました」と、店名の由来を教えてくださいました。


提供される料理はすべて、カウンターの奥に設えた2種類の薪窯で調理されます。桜の薪をくべた窯では主に肉料理を、もう一つの楢の薪をくべた薪では野菜を中心に。薪窯による調理は食材の水分や旨味の大本となる脂分を閉じ込めることができるため、食欲を刺激するふくよかな香りを十二分にたたえながら、外側は香ばしく口に運べばジューシーな味わいがあふれ出すといった、極上の逸品に仕上がります。


 店内は1階が調理風景を楽しみながら運ばれる料理を堪能できるお客様のためのフロアとなっており、2階はお手製の発酵蔵として使われています。階段をのぼった先にあるそのフロアには小瓶がずらり。

シェフのJacob Kear さんが京都各所の里山を実際に歩き、許可を得て自ら積んで持ち帰った花や果実、草木を漬け込み、料理に生かしているそうです。ピクルス、ジャム、ジュースなど、これらの用途は実にバラエティ豊か。食材の臭みを消すことはもちろん、香りづけや旨味の増幅など、LURRA°のアイデンティティと言っても差し支えない独創性を支えています。






独自性の高いその一皿には、薫香が最大限に発揮されていた


 薪窯による火力、薫香。古今東西の垣根を越えたボーダーフリーな料理。これらは日本酒というジャンルに、どのように適合するのでしょうか。新たな可能性に期待を膨らませてマッチングをお願いするべく携えた

1本は、SUIGEI HIGH END COLLECTION 純米大吟醸《弥》。上質な吟醸香とリンゴやバナナを思わせるフルーティーな飲み口にこだわり抜いた作品です。


 「私たちが提供する料理はスパイスをきかせたものが比較的多く、個性的と言われればそうかもしれません。それでも、この《弥》は非常に相性が良いお酒かもしれないと感じられました」 口に含んだ感想を宮下さんはこう話します。シェフのKearさんによるテイスティングも経てしばらく。キッチンからは、和のテイストを存分に感じられるかわいらしい器が運ばれてきました。


 考案されたメニューは、白子とカリフラワーの茶碗蒸しです。白子はバターミルクで漬け込み、猪の脂でコーティ

ングしたのち、桜の薪で焼き目がつけられていました。カリフラワーは楢の薪をくべたもう一つの窯でロースト。生

ハムで出汁を抽出し彩りに花穂紫蘇をあしらうなど、細部に至るまで丹念に手をかけた料理が供されました。

 白子とカリフラワーの薫香がこの上なく鼻腔をくすぐり、口に含んだ際の舌触りはふんわりと心地良く。複合的に折り重なる見事な味わいにより、酔鯨の《弥》が持ち合わせる食中酒としてのポテンシャルが存分に引き出されていました。






豊かな自然に敬意を払う。それこそがLURRA°のアイデンティティ


 農耕と狩猟が人類の食における横軸を広げたとすれば、加熱による衛生と保存は未来へとつながる縦軸を形成しました。そして、調理における香りによって、人を人たらしめる感性の豊かさが私たちに授けられたと言えるかもしれません。季節を感じる、旬を味わう、文化と伝統に想いを寄せる。このような情緒が料理によってもたらされるという考えに異論をはさむ人は、そう多くないでしょう。


 「京都の地で飲食業を営む以上、まず何よりこの土地を大切にし地元の方々に愛され、国内外を問わず遠くから訪れる方々に風土の魅力を知っていただくことは、いつまでも決して忘れてはならない使命だと認識しています」LURRA°の運営における基本姿勢を、宮下さんはこのように捉えているようです。


 続けて「訪れるお客様には例えば調理において酸味を生かすこと、食材独自の香りを感じていただくことなどを日

頃から意識してはいますが、何より大切に心掛けていることは『自然に対して敬意を払う』という一点です」と、宮

下さんは話します。ゆらめく薪の火が灯すおだやかなぬくもりの中で、宮下さんは静かに笑顔をたたえていました。

 

酔鯨の数あるコレクションは国と地域、そして歴史の変遷を問わず、その地に根差した食文化と普遍的な相性の良

さを発揮するのかもしれません。古の歴史を今に受け継ぐ京都の地で、飲食の世界の本質を確かに知ることができる

邂逅がありました。






General Manager 宮下拓己(みやした たくみ)さん


東京都生まれ。仏・Micheal Bras で修行。帰国しサービスへ転向、東京や大阪のレストランでソムリエとして勤務。渡豪し、メルボルン・VUE DEMONDE で経験を積み、ニュージーランド・Clooneyにてヘッドソムリエとして、3 ハット獲得に貢献。






LURRA°- ルーラ-

〒605-0021 京都市東山区石泉院町396

電話:050-3196-1433

営業時間:17:30~23:30

(17:30 からと20:30 からの一斉スタートのみ)

定休日:日曜、月曜日





酔鯨 純米大吟醸 弥-Ya-


お酒を楽しむ時間に最適の日本酒


酔鯨の探求する酒造りのスピリッツの中でも、特に香りの自由を解き放った華やかな味わい。その情熱の欲望から生まれた『純米大吟醸 弥 〜ya〜』。高知県が開発した高知酵母「AC-95」を使用し、リンゴ様(カプロン酸エチル)とバナナ様(酢酸イソアミル)の2種類の吟醸香が特徴。それは、これまでに経験したことのない香味が、華やかで新しく、また艶やかなフルーツを連想させ、上質な飲み口が吟醸香をいっそう引き立てます。日本酒本来の輝き満たす香りの世界を表現しました。繊細で自己主張の強いその味わいは、生命力豊かな紅(くれない)をイメージし、whale tail のイメージカラーにしました。日中の喧騒から離れ、香りを楽しむ静寂な夜のひと時。その一口から扉が開く『その華やかさ。紅(くれない)のオマージュ』な時間。


酔鯨の冒険心に飛んだ香りの時間をお楽しみください。



PAIRING

酔鯨 HIGHEND COLLECTION 純米大吟醸 弥Ya  

使用米 / 山田錦(兵庫県産)

精米歩合 / 40%

内容量/720ml

価格/7,700円(税込)

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